有機半導体や太陽電池への展開を志向した共役ポリマーの合成(福元)

一般に高分子は電気を通さない絶縁体と言われています。高分子を構成する炭素原子などはお互いに電子を出し合って「σ結合」とよばれる化学結合により強くつながっています。σ結合に関わる電子は金属中の自由電子のように高分子の中を自由に動き回れないため、高分子にはほとんど電流が流れません。 化学結合にはσ結合と「π結合」と呼ばれる結合があります。π結合はσ結合ほど強い結合ではなく、π結合に関わる電子も結合内を動き回ることができます。 特に、π結合とσ結合が交互に連続してつながっている高分子は「π共役」高分子と呼ばれ、添加剤(ドーパント)を加えると電気が流れるようになります。 電気が流れるπ共役高分子は導電性高分子とも呼ばれ2000年にノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生らによって見出されています。 このようにπ共役高分子は従来の高分子とは異なる性質を示すことから、現在では、トランジスタ、太陽電池、ディスプレイなど電子・光機能性材料への応用が期待されています。 私たちの研究グループでは、電子・光機能性を示す様々なπ共役高分子の開発を行っています。




典型元素の個性を活用した光機能性分子の開発(吾郷)

周期表の右側(左端もありますが)を占めている典型元素は、元素ごとにユニークな性質・特徴=「元素の個性」をもっており、元素の個性をうまく活かすことで有機化合物に面白く有用な機能を付与することが可能です。私達は「発光」を代表とする有機化合物の光機能に注目し、様々な典型元素を有機分子に組み込むことで、長波長発光、青色熱活性化遅延蛍光、リン光、およびエレクトロルミネッセンス(EL)といった「発光機能」をもつ光機能性分子を開発してきました。特に、次世代ディスプレイなどに必須である高効率・高輝度発光材料の開発に向けて、「ホウ素」の個性がとても有用なことに着目し、「有機ホウ素化合物」を鍵とした発光分子の分子設計と合成、材料評価を進めています。分子設計や有機EL素子の性能評価については、学外研究機関との共同研究を行なっています。大学ウェブページでの紹介も御覧ください。




フッ素の特徴を活かした機能性有機分子・高分子の開発(福元・吾郷)

フッ素は最大の電気陰性度を持ち強く分極率の低いC-F結合を形成すること、水素置換基についで原子サイズが小さいこと等、他の元素に見られない特徴を持っています。有機分子にフッ素置換基を導入することで、撥水撥油性、透明性、低誘電率、高耐熱性、化学的安定性といった機能性材料として大変魅力的な性質を持った有機フッ素化合物が得られます。私たちの研究グループでは、久保田俊夫名誉教授を中心に、様々な構造・機能をもつ有機フッ素化合物の合成を行ってきました。一例として、高度にフッ素化された有機フッ素化合物の一つであるオクタフルオロシクロペンテンに着目し、この分子の持つ優れた反応性を活用することで、有用な物性を示すフッ素化ポリマーを報告しています。本ポリマーは安価な材料から簡単な反応で合成可能ですが、高価なフッ素樹脂に匹敵する材料特性をもちます。環状アルケンモノマーBHFCは東京化成工業株式会社から販売中です。ご関心が有る方は東京化成様のウェブページで詳細をご確認ください。このポリマーを含め関連の高機能性フッ素化ポリマーの総説記事を出しています。
久保田俊夫名誉教授のご研究を引き継いで、福元・吾郷の共同グループでは様々な構造・特徴をもった有機フッ素化合物・高分子の開発を行なっています。学外研究機関や化学系企業との共同研究も推進しています。